学会について
理事長のご挨拶
2024年(令和6年)6月に日本認知・行動療法学会の理事長を拝命いたしました清水栄司と申します。今年は、1974年(昭和49年)に日本行動療法研究会が発足して50周年(半世紀)の節目を記念する年です。このような重大な時期に、歴史ある本学会の重責を担うことは、非常に光栄であるとともに、非常に身に引き締まる思いです。本学会の理事、役員、評議員、会員の皆様にお助けいただきながら、自分のベストを尽くし、精進したいと思っております。
本学会は、認知行動療法に関する研究・臨床活動、教育・研修活動を促進し、その普及をはかることを目的としています。認知行動療法は、その名の通り、認知(考え)と行動を取り扱う療法ですが、不安やうつなどの感情の問題に焦点があてられることも多いです。よって、認知行動療法は、うつ病、不安症などのこころの病気に対する心理学的介入法として科学的根拠が積み重ねられてきており、さらに、メンタル不調の予防から、メンタルヘルスの向上、ウェルビーイングの向上へと幅広く展開されています。
ネガティブな感情だけでなく、ポジティブな感情を取り扱うことも重要です(ネガティブ、ポジティブという表現にはすでに価値判断が入ってしまっているので、注意が必要ですし、ネガティブな感情ももちろん、必要なもので、十分に受け止めて大切にすべき感情なのですが、一般的に理解しやすいので、ここではそのように表現させていただきます)。ネガティブな不安という感情に対しては、ポジティブな安心、さらには心理的安全性を目指すことができます。ネガティブなうつ、興味が持てない、うんざり感という感情に対しては、興味・関心がわく、インスピレーションがわく、インスパイアされるという感情を目指すことができます。職場や学校、組織の中で、安心の感情とインスピレーションの感情を向上させ、大きなイノベーションでなくても小さなイノベーションを起こし続けるマインドを大切にする認知行動療法を、私はイノベーションマインド認知行動療法として、ウェルビーイングの向上のさらに先を目指すことが可能と考えております。
さて、以下に本学会の活動を広報することにも力を入れておりますので、本紙面で、簡単にご紹介させていただきます。
年次大会では年に一度、みなで集まり、活発な話し合いを行うとともに、認知行動療法をワークショップ形式で多くの方に学んでいただいています。別に、認知・行動療法コロキウムとして症例検討会を行っています。また、会員以外の方にも参加していただける認知行動療法セミナーを全国各地で開催しています。機関誌として「認知行動療法研究」を年間3回発行し、掲載された研究論文の中から優れたものに、内山記念賞を授与しています。世界認知療法行動療法会議(World Congress of Cognitive and Behavioral Therapies)傘下の学会、アジア認知行動療法会議(Asian Cognitive Behavior Therapy Conference)も含みますので、国際学会へ研究発表のために参加する方への助成を行う国際学術交流助成事業を行っています。他にも、研究を推進するために、特定分野の関心を共有する専門家間が、ネットワークを形成、維持し、研究・実践活動を行うためのオープンな集まりの場を設けるために、SIG(Special Interest Group)のような活動も進めております。
本学会が伝統的に取り組んできた、行動療法士®の資格認定に加え、近年、認知行動療法トレーニング・ガイドラインを整備し、認知行動療法トレーニング・ガイドラインに基づくeラーニングを提供し、認知行動療法スーパーバイザー®を希望者に紹介するなどして、認知行動療法師®の資格認定を開始しています。
また、日本認知・行動療法学会ダイバーシティ&インクルージョン推進千葉宣言、宮崎宣言を行い、多様性を重視した学会活動を推進しています。
興味を持っていただいた方におかれましては、ぜひとも本学会へのご参加をご検討いただき、いっしょに認知行動療法を深めていくことができれば、幸いに存じ上げます。皆様方の本学会へのご理解とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2024年7月吉日