日本認知・行動療法学会では、認知行動療法の臨床・研究の発展・充実に寄与する研究発表の奨励を目的として、日本認知・行動療法学会の年次大会に応募されたポスター発表のうち、最も優れた発表に対して授賞する「ポスター発表賞」の選考を行い、最優秀研究発表賞、優秀研究発表賞、最優秀症例発表賞を授与しました。
P1-76 福留 尚典先生「認知症高齢者の家族介護者における認知症症状への理解様式が抑うつ・不安に及ぼす影響」
このたびは、日本認知・行動療法学会第50回記念大会において、最優秀研究発表賞を賜り、誠にありがとうございます。ご選考いただきました委員の先生方に心から感謝申し上げます。
受賞したポスター発表では、認知症患者をもつ家族介護者を対象として、認知症の行動的症状に対する理解様式が抑うつ、不安への影響を検討することを目的としました。 その結果、認知症の行動的症状が高かったとしても、認知症の知識と、行動の結果を予測する随伴性知覚が高い者は、抑うつ、不安が低いことが示されました。 本研究の結果は、今後の家族介護者に対する介入が、認知症の知識といった医学的な症状理解だけでなく、心理学的な症状理解の必要であることに示唆を与えるものだと考えております。
共同発表者である嶋田洋徳先生からは、多くのご指導を頂きました。 また、介護という忙しい日常のなか本研究にご参加いただきました皆様、本研究にご協力頂きました職員の皆様、一緒に研究依頼に同行してくださいました研究室の皆様、この場をお借りして深くお礼申し上げます。 このたびの受賞を励みに、より一層研究活動に精進してまいります。
P1-32 渡邊 明寿香先生「慢性疼痛に対する多職種による集団認知行動療法の効果」
この度は、日本認知・行動療法学会第50回記念大会の優秀研究発表賞を賜り、誠にありがとうございます。ご選考いただきました先生方、関係者の皆様に心から感謝申し上げます。
本研究は、当院で実施されている慢性疼痛患者に対する多職種による集団認知行動療法が、生活の質や痛みの程度、痛みに対する自己効力感に及ぼす効果を検証しました。その結果、集団認知行動療法を通して、「痛みがあっても日常生活や余暇活動ができる」という自信が高まった可能性が示されました。一方で、生活の質や痛みの程度に対する効果は小さく、集団認知行動療法で得られた気づきを実際の生活に落とし込み、広げていくためには、さらなるプログラムの改善が必要であると考えられました。本研究をもとに今後も取り組みを続け、本邦における慢性疼痛支援の発展や普及に貢献したいと考えております。
共同発表者の皆様には、集団認知行動療法の開催から発表まで、多くのご指導・ご助力をいただきました。心から感謝いたします。また、本研究にご参加いただきました皆様、開催に際しお力添えいただいた病院スタッフの皆様に、この場を借りて深くお礼申し上げます。この度の受賞を励みに、今後も臨床・研究活動に精進してまいります。
P1-82 市川 玲子先生「セルフ・モニタリングアプリ「自分日誌」の利用による心理的効果の検討―個別化されたセルフ・モニタリングの効果―」
このたびは日本認知・行動療法学会第50回記念大会ポスター賞優秀研究発表賞に選出してくださり、誠にありがとうございました。選考にあたられました先生方に心より御礼申し上げます。
弊社はITの力でさまざまな社会課題を解決することを目指しており、その中で私どもは心理学や行動科学の観点から行動変容の研究を行う部署に所属しております。
今後もICT×心理学の力で新たな価値を創出し、また産業と学術研究の橋渡しができるよう精進してまいります。
最後になりますが、本研究にご参加くださった皆様、そして発表当日に貴重なご意見をくださった皆様、各種委員の先生方に重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。
今回受賞した研究は、我々が研究開発した「自分日誌」というセルフ・モニタリングアプリの心理的効果を検証したものです。より効果的なセルフ・モニタリングを支援し、目標達成や習慣形成を目指してもらうべく、認知行動療法の視点を参考に設計した本アプリが、先行研究で示されているようなセルフ・モニタリングの効果を示すことを予備的に検証いたしました。その結果、自己理解や自己制御などに関する一定の利用効果が示されました。
P2-05 上田 紗津貴先生「女子大学生に対する摂食症の予防的介入のランダム化比較試験」
このたびは優秀研究発表賞を賜り,誠にありがとうございます。第50回という記念すべき大会でこのような賞をいただき,大変光栄に存じます。ご選考いただいた先生方に深く感謝申し上げます。
本研究では,女子大学生に対する摂食症の予防的介入として,不協和理論に基づく介入(dissonance-based intervention: DBI)を用いたランダム化比較試験を実施し,その有効性を検討しました。本研究の結果,介入直後の群間比較によって,DBIがターゲットとする「痩身理想の内面化」というリスク要因に効果がみられました。また,フォローアップの群内比較によって,DBIによって変化が想定される全ての変数に改善と維持効果が認められました。今後も,日本における摂食症の予防的介入の普及や実装を目指して,研究を積み重ねていきたいと考えております。
共同研究者のみなさま,研究の実施にご協力いただいたみなさま,そして研究にご参加いただいたみなさまに,改めて心より御礼申し上げます。摂食症やメンタルヘルスの問題の予防に貢献できるよう,これからも研究活動に精進してまいります。このたびは本当にありがとうございました。
P2-46 武田 知也先生「うつ病のためのメタ認知トレーニングの抑うつ症状に対する効果の検証-大学1年生を対象とした無作為化比較試験-」
この度、日本認知・行動療法学会第50回のポスター賞を賜りましたことを、大変光栄に思います。本研究にご参加いただいた皆様、共同研究者の方々、そして選考してくださった先生方に、心より感謝申し上げます。
本研究では、うつ病の発症リスクが高い大学1年生を対象に、初年次教育の一環として実施した「うつ病のためのメタ認知トレーニング」のうつ症状に対する効果を、無作為化比較試験により検証しました。その結果、PHQ-9のカットオフ得点を超えた参加者において、否定的自動思考の生起頻度の減少と思考制御の必要性に関する信念の低下が認められました。一方で、抑うつ症状の重症度には有意な改善が見られず、さらなる研究の発展が求められます。
今回の受賞を励みに、うつ病の発症リスクが高まる年代に向けた予防プログラムの社会実装を目指し、今後も研究に尽力してまいります。最後になりますが、本研究に関わってくださったすべての方々に、改めて深く感謝申し上げます。
P1-44 今北 哲平先生「認知機能障害がある独居高齢患者の「薬を管理する行動」の形成と般化-訪問と多機関連携による応用行動分析-」
この度は,第50回大会にて最優秀症例発表賞を賜り,大変光栄に思います。また,介入の立案や実施,成果の発表等に至るまで,ともに取り組んで下さった沢山の方々に心より感謝申し上げますとともに,選考委員の先生方に厚く御礼申し上げます。
本事例では,認知機能障害や薬の多さによって日々の服薬管理がうまくできていなかった独居高齢患者さんに,心理師と作業療法士が精神科訪問看護の枠組みで応用行動分析学(ABA)的介入を実施しました。 似たような先行研究がなく,挫けそうになったこともありましたが,ABAの理論や技法を丁寧に適用し,他職種,他機関と連携することで,患者さんの自己管理行動が形成されていきました。 認知機能障害があり,薬の自己管理が難しく,支える近親者もいないとなると,通常であれば「施設入所」と判断されてしまうケースであったかもしれません。「認知症だし無理」と思考停止に陥らず,患者さんの残存能力を生かしながら行動変容や自己効力感をサポートすることができるのは,ABAならではだと思います。 なお,当日のポスター発表においては,色覚の多様性を考慮し,誰でも見やすいポスターデザインを心がけました。
今回の受賞を励みにし,より一層,臨床実践や研究活動に真摯に向き合っていきたいと思います。
該当なし