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2020年度名誉会員芝野松次郎先生へのお祝いの言葉(杉山雅彦先生)

お祝いの言葉

 ずいぶん昔の話です。その頃(当時の)行動療法学会の大会は、症状や問題行動をいかに早く消滅させたか、「適切」な行動をいかに早く形成したかを競い、議論する傾向にありました。それはもちろん必要な議論ではありました。そういった議論をしていた際に、「その人幸せでしょうか」とことばを発した人がいました。その方が芝野松次郎先生でした。正直その瞬間は、「こいつ何を言っているんだ」と思いました。でも、その後、私としては、珍しく、指摘いただいたことを真剣に考えることになります。

 今でもあまり多くはないのかも知れませんが、会員に福祉の専門家がほとんど見当らない時代がありました。そんな時代、芝野先生はある意味異彩を放つ存在でした(余計な話かもしれませんが、本学会では珍しい、本物の紳士でもあります、その点でも異彩が・・・)。芝野先生の指摘は、私にとっては向こうからは違う景色が見えているかもしれないということを考える、起点になりました。

 先生の御著を読ませていただくと、行動形成を行う場合でも、その標的がその人の住む環境の中で機能することを前提に設定されていることがよくわかります。その結果強化される機会が増え、「幸せ」に近づける。えっ?今そういうやり方してますって?そういう分析の枠組みを、先生はずっと以前より持っておられたということになります。先生が自分の考え方の基本は福祉なんだとおっしゃったのを聞いたことがあります。welfareすなわちwell+fare、望んだとおりに良く生活をしていく、その人にとって「良い」生活が基礎になる、臨床を行っていく上で、当たり前といわれればそうなんだけれど、どんな立場であっても常に意識していなければならないことだと思っています。

 勿論これからも名誉会員として若い人たちを引き続きご指導いただけるものと思っています。これからもよろしくお願いいたします。

杉山雅彦

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