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日本認知・行動療法学会第48回大会 ポスター賞

日本認知・行動療法学会では,認知行動療法の臨床・研究の発展・充実に寄与する研究発表の奨励を目的として,日本認知・行動療法学会の年次大会に応募されたポスター発表のうち,最も優れた発表に対して授賞する「ポスター発表賞」の選考を行い,最優秀臨床報告賞,優秀臨床報告賞,最優秀研究報告賞,優秀研究報告賞を授与しました。

<最優秀研究報告賞>

P1-34 窃盗症における窃盗行動の「自動化」維持要因の記述的検討
浅見 祐香先生・野村 和孝先生・嶋田 洋徳先生・大石 裕代先生・大石 雅之先生

最優秀研究報告賞受賞コメント(浅見)

 このたびは、日本認知・行動療法学会第48回大会の最優秀研究報告賞を賜り、誠にありがとうございます。

 受賞したポスター発表では、効果的な再犯防止対策の確立が課題とされている窃盗に関して、高頻度に繰り返される窃盗行動の維持要因を実証的に明らかにすることを目的といたしました。 そのため、窃盗行動への依存であるとされている窃盗症患者および窃盗症には該当しない窃盗経験者を対象として、質問紙と認知課題を実施しました。窃盗は一般に犯罪に相当するため、社会的な望ましさの影響を受けやすい点を踏まえて、本人が操作しにくい潜在指標である認知課題を用いることとしました。 その結果、窃盗に対する渇望が強い層と、渇望に加えて窃盗行動をすることによって良い結果が得られるというルール支配行動が強い層とに整理されることが明らかにされました。 渇望とルール支配行動は維持メカニズムが異なるため、本研究の結果は、効果的な支援手続きの選択に寄与するアセスメントの観点になりうると考えられます。

 共同発表者である、野村和孝先生、嶋田洋徳先生、大石裕代先生、大石雅之先生から多くのご指導をいただいており、心より感謝申し上げます。このたびの受賞を励みにして、より一層研究活動に精進してまいりたいと思います。

<優秀研究報告賞>

P2-22 高い反すう・心配傾向を示す女子大学生に対する反すう焦点化認知行動療法自助プログラムの有効性
―介入前後および6カ月フォローアップのデータを用いた比較検討―
梅垣 佑介先生・古藤 愛理先生

優秀研究報告賞受賞コメント(梅垣)

 歴史ある日本認知・行動療法学会の優秀研究報告賞を頂戴し,大変光栄に思います。

 本研究は,反すう焦点化認知行動療法(RFCBT)の自助プログラムの効果を調べた先行研究(Umegaki et al., 2022)と,その後に同じプログラムを用いて実施した別の介入研究のデータを統合し,より大きなサンプルで効果を検証したものです。分析の結果,介入後に反すう・心配・不安の有意な減少が認められ,効果は6カ月後にも継続していました。

 本研究は梅垣ゼミM2古藤さんとの共同研究ですが,二人だけで成し得たものではありません。RFCBTの創始者Edward Watkins先生には,自助プログラム開発から研究デザイン構築に至るまで,全般にわたりアドバイスを頂きました。Eugene Mullan先生にも,本学と英国の共同プロジェクトをサポートして頂きました。中川敦夫先生には,最初の介入研究をサポート頂きました。すべての方のお名前を挙げることはできませんが,沢山の方からご指導やご助言を賜りました。多くの方に支えられた本研究が優秀研究報告賞を受賞できたことを大変嬉しく思います。今後も,我が国で反すうをターゲットにしたCBTの深化や普及に益々努めていきたいと決意を新たにしています。

 最後になりますが,本研究に参加してくださった皆様,そして宮崎で素晴らしい学会を開催してくださった運営委員の先生方,スタッフの皆様に感謝申し上げます。

<最優秀症例報告賞>

P1-82 不定愁訴の多い高齢者うつ病に対する認知行動療法 ―夫とのコミュニケーションの増加を意図した介入により奏功した一例―
與儀 耕大先生・竹岡 里紗先生・小谷 泰教先生・井上 英治先生・甲田 宗良先生

最優秀症例報告賞受賞コメント(與儀)

 この度は,ポスター発表最優秀症例報告賞を賜り、誠にありがとうございます。ご助言とご指導をいただいた,むつみホスピタルの小谷泰教先生,井上英治先生,竹岡里紗先生,徳島大学の甲田宗良先生,そして,症例報告することに快諾してくださった患者様に,この場を借りて心より感謝申し上げます。

 本症例は,不定愁訴の多い高齢者うつ病に対して患者本人だけではなく,配偶者にも積極的にはたらきかけました。具体的には,不定愁訴の機能分析を行い,不定愁訴に配偶者のコミュニケーションを引き出す機能があることが明らかとなったため,配偶者にも協力を依頼し不定愁訴の先行刺激と後続刺激を操作しました。その結果,不定愁訴の減少と日中の活動量の増加が認められ,うつ・不安が低減しました。本症例報告は,本邦のCBT(とくに高齢者医療)の臨床・研究の発展・充実に寄与することができると考えております。

 今回の受賞は,これまでご指導ご鞭撻してくださった先生・先輩方,一緒に切磋琢磨してきた同僚と後輩,多くの方々のおかげであると考えております。今後も感謝の気持ちを忘れずに,自己研鑽によって得られた学びと発見を臨床に還元できるようより一層精進して参ります。

<優秀症例報告賞>

P1-11 強迫性障害の患者に対し擬似的アクセプタンスに注目し介入を継続した症例
高橋 まどか先生

優秀症例報告賞受賞コメント(高橋)

 この度は、日本認知・行動療法学会第48回大会ポスター賞 優秀症例報告賞を賜り、誠にありがとうございます。選考いただきました先生方、関係者の皆様に心から感謝申し上げます。

 受賞ポスターは、強迫性障害のクライエントに対し、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を導入し、クライエントの対処行動が擬似アクセプタンスの機能を有することに注目して、フォローアップを継続した症例について報告したものになります。

 症例の報告にあたり、一緒に課題に取り組み続け、発表を快諾してくださったクライエントの方、そして、カウンセリングの実施や服薬調整を的確にご判断いただいた主治医の先生方に、改めて御礼申し上げます。

 今回の受賞は、実践家としてまだまだ未熟な私には身に余る栄誉で、大変恐れ多く感じております。日々臨床実践に追われてばかりではありますが、知見をもとに実践をし、その結果を形にして発表をすることで、認知・行動療法の発展に微力ながらも寄与できればと考えております。そして、今後もより一層研鑽を重ね、一緒に働く現場のスタッフや目の前のクライエントのQOL向上に少しでも貢献できるよう、精進して参りたいと思います。この度は誠にありがとうございました。

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